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2010'12.24 (Fri)

Cast a special spell on me !

雪歩誕生日おめでとう!
晴嵐改さんのイラストを元に、ゆきりつSSを書いてみました。

※800行
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23:20  |  雪歩  |  TB(0)  |  CM(6)  |  EDIT  |  Top↑

2009'12.06 (Sun)

とあるダメダメプロデューサーのおはなし

あるところに、いつまでもトップアイドルになれない雪歩がいました。

雪歩は、事務所でいちばん臆病でへなちょこで弱虫なアイドル。
ろくにランクも上がれないので、プロデューサーは数週間単位で変わってばかりです。

雪歩を目にした審査員は、雪歩を静かにさとします。

『君は多分、アイドルじゃない道のほうが、歩きやすい女の子なのかもしれないな。
 トップアイドルのステージなんて、普通の女の子なら縁が薄い場所だからね』
 
アイドルに向いていないと言われた雪歩は、やっぱりトップアイドルになれませんでした。

*****

ある日雪歩は、ピンときた社長に声をかけられました。
不在のプロデューサーに代わって、アイドル候補生を担当してくれないかと言うのです。

気がつけば、小さな事務所は、前よりずいぶんボロボロになっていました。
資金も底を尽きかけており、プロデューサーはみんな辞めてしまっていたのです。

社長は雪歩を責めませんでしたが、小鳥さんと相談しているのを見かけたことがあります。
弱小事務所の765プロは、もはや弱小を超えて、倒産寸前まで追い込まれていたのです。

ひとりのダメダメアイドルが、765プロをボロボロ事務所にしてしまったのです。
そんな悲惨な結果を前に、逃走なんて許されません。

お姫さまティアラを受け取った雪歩は、ひとりのアイドル候補生にそれを託しました。

なるべく真剣な顔で、「今日から私があなたのプロデューサーです」と告げましたが、
頼りなさそうな雪歩の本性を、女の子は一目で見抜いてしまいました。

あっさり本性を見破られた雪歩は、今すぐスコップ片手に仕事を放り出したくなりました。
けれど今の事務所にひとつ穴をあければ、たちまちビル倒壊が引き起こされてしまうでしょう。

得意な穴掘りさえ封じられた雪歩は、プロデュース活動を始めるほか無かったのです。

*****

雪歩が事務所に穴を掘れなくなって、早二ヶ月が経ちました。

自分が叱られないレッスンと、ステージに立たなくていいオーディションは、
ダメダメアイドルだった雪歩にとって、すこしだけ安心できる仕事です。

大きなステージを前に、ガチガチになって後ずさりする女の子を励ますこともありました。
なにしろ雪歩は後ずさりどころか、穴を掘って逃げたことさえあるのです。
アイドルのダメっぷりなら、そのへんの誰にも負けません。

765プロの、ダメダメへなちょこアイドルなんて、雪歩の他には存在しないのです。
饒舌になったダメダメ話から、雪歩が我にかえった時には、女の子は大笑いしていました。

雪歩のダメダメだった武勇伝が、女の子の自信と勇気に変わったのです。

女の子から感謝されて、雪歩はなんだか頬のあたりがくすぐったい気分になりました。
それは雪歩が、女の子のプロデューサーになって、初めて浮かべた笑顔でした。

ダメダメだったことで誉められた経験なんて、雪歩の思い出にはひとつもなかったのです。

*****

ダメダメアイドルだった雪歩の目には、女の子がとても立派で素敵なアイドルに映りました。
プロデューサーが自信をもって絶賛する女の子が、オーディションで輝かないはずがありません。

女の子は立派なアイドルに成長していきました。名のあるステージを片っぱしから渡り歩きました。
事務所はスタッフでいっぱいになり、雪歩がいくつ穴を掘っても平気なくらい立派になっていました。
それでも、雪歩が穴を掘って埋まりたくなる機会なんて、あれからとんと来なかったのです。

雪歩は、このままずっと女の子がアイドル活動を続けてくれたらいいなと思っていました。

でも、それはあっさり否定されてしまいました。女の子は他にも夢があるというのです。
言葉をなくした雪歩を前に、女の子は素敵な笑顔で尋ねます。

「叶えたい夢はありますか?」

雪歩は少し考えてから、「あなたをトップアイドルにしたいです」と言いました。
女の子は「そうなの」と言ったきりでした。

雪歩は笑って頷きましたが、内心とてもしょんぼりしていました。
女の子がアイドル活動をやめたら、もう一緒に仕事ができなくなることが、急に寂しくなったのです。

*****

そしてとうとう、雪歩が恐れていた日がやってきました。

立派になった765プロの社長室で、これまた立派な椅子に座った社長が、
「今まで本当によく頑張ってくれた。最後にアイドルのお別れライブを開きたまえ」と告げたのです。

雪歩は気乗りしませんでしたが、女の子は活動停止をしっかり受け止めました。
しょんぼりした気分を隠しつつ、雪歩は最後のステージをプロデュースします。

その日の夜の、きらめく舞台は、普段のステージより遥かにキラキラしていました。
雪歩が立ったことのない、トップアイドルだけが歌うことを許された特別なステージ。

何十万もの歓声が、その倍の数のペンライトが、女の子とその歌声を称えています。
けれど女の子は、その素敵な場所さえも、夢のためなら惜しくはないと言うのです。

成功したアイドルを、うらやましく思う気持ちなんて、もうずっとずっと昔に忘れていたはずなのに。
雪歩は、ほんの少しだけ、あの女の子がうらやましくなっている自分に気づきました。

*****

ライブを終えた女の子に夢のことを尋ねると、女の子は雪歩をある場所に連れ出しました。
そこはかつて、雪歩が何度も穴を掘った、オンボロだったはずのビル。
リフォームされた内装に至っては、まるで現在の765プロにいるようです。

女の子は、独立してマネージャーの仕事に就きたかったことを、雪歩に明かしたあと、
ここが765プロの傘下におかれる事務所で、雪歩が望めば社長にだってなれることを伝えました。

雪歩は驚きました。社長になりたい気持ちなんて、これっぽっちもなかったのです。
女の子の夢は輝いていましたが、16歳で社長になるプロデューサーなんて聞いたこともありません。
社長になることを望んでいない雪歩に向かって、女の子は以前とまったく同じ表情をして尋ねます。

「叶えたい夢はありますか?」

雪歩は少し考えてから、「トップアイドルになりたいです」と言いました。
女の子は、「そうなの」と言って、そして。

「今日から私があなたのプロデューサーです」と、満足そうに告げました。

                                    (おしまい)




【考察】 創作発表板アイマススレ4-95・96 投下日:2009/12/06

10月から現在進行中でPC規制されてしまいまして、創作関連は少しお休みをいただいておりました。
12月に入って、当日中とはいきませんでしたが、雪歩誕生日SSのつもりで書きました。

誕生日一番乗りとは言えませんが、クリスマスネタから離れたところで、ダメダメ雪歩をお祝いする作戦です。

雪歩と律子はMAでペアを組んでいることもあり、なかなかバランスの取れた組み合わせなのですが、
「真面目でしっかり者の律子と、ダメダメで気弱な雪歩」という面と
「実はヘタレな律子と、実は度胸持ちな雪歩」という面が備わっているのがとりわけ面白いなあと思います。

女性Pとして、765プロのアイドルをプロデュースすることも、だいぶ自然の流れになってきた律子なので、
今回はあえて、765プロのアイドルである雪歩にプロデュースされてもらうことにしました。

***

すこし個人的な話になってしまいますが、この雪歩はトップアイドルになったあと、
「ごほうびをください」と言って、秋月Pから焼肉をおごって貰いそうな雪歩をイメージしています。

ダメダメなほうの雪歩も、ダメダメじゃない雪歩も、えこひいきせず書いていきたいなと思います。
00:00  |  雪歩  |  TB(0)  |  CM(3)  |  EDIT  |  Top↑

2008'12.24 (Wed)

雪歩のクリスマス(12/12)

「プロデューサー……サンタさんの格好でアンコールなんかして、本当に大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だろ。サンタを騙って悪いことしてるわけじゃないし」
「でも、今日はクリスマスイブですよ。サンタさんもお仕事してる日ですよ。
 アンコールがちっとも盛り上がらなかったら、本物のサンタさんに恥をかかせちゃうかも……」
「どこからどうみても完璧なサンタなのに止めちゃうのか? なんだか勿体ないな」
「そ、そうでしょうか?……私、そんなに完璧ですか?」
「ああ。あんまり完璧すぎて、雪歩がアンコールに怖気づくまで気付けなかったくらいだぞ。
 その格好で弱気になったり穴掘ったり凹んだりしなきゃ、観客の誰にもバレないんじゃないか?」
「本当ですか? な、なんだか私やれそうな気がしてきました。
 プロデューサー、私がんばってサンタさんになってきます!」

***

「プロデューサーの言ったとおりです。ちっともバレませんでした。サンタさんだ!って言われました。
 みんなサンタさんのことが大好きみたいです。私もいっぱい嬉しくなりました」
「サンタに会えるチャンスは24日だけだからな。どうする? もっと歌ってくるか?」
「私、もうちょっとだけサンタさんのままでステージに出たいです。
 ファンのみなさんが起きてるうちに、プレゼントを届けてきてもいいですか?」
「行っておいで。――でも絶対バレたりしないようにな」

***

「やれやれ、やっと終わった。急いで雪歩を家に送り届けないと」
「プロデューサー。お待たせしました」
「ん? 雪歩、いつまでサンタの帽子かぶってるんだ? 来たときは白い帽子だったろ?」
「ぷ、プロデューサー。私はその子じゃありませんよ。
 ダメダメで弱虫でいくじなしなアイドルの女の子は、先にお家に帰っちゃいました」
「……あれ? じゃあ俺は、雪歩と間違えてサンタを車に乗せちゃったのか?」
「そうです。厳しいお父さんがいて、お誕生日だから寄り道なんかちっとも許してくれなくて、
 だからさっきお母さんに電話して――えっと、それで帰っちゃったみたいですよ?」
「そうだったのか。サンタは何でも知ってるんだな」
「もちろんです。サンタさんは何でも知ってますよ」
「じゃあ、俺がその子にプレゼント用意してたことも、渡しそびれたことも知ってるんだな?」
「……えっ。……えっと、知ってますよ。サンタさんは何でも知ってます。
 でも、今年のクリスマスのことは、見まわってみないと何もわからないかもしれません」
「そうか。それじゃあ街を見まわってこよう。なにしろ今日はクリスマスイブだからな。
 美味しいお店も楽しいお店も、街にいけばたくさんあるような気がするぞ」

***

「今日はありがとうございました。いろんな場所につれてってもらえて楽しかったです。
 あの。あとひとつだけお願いがあるんですけど、聞いてもらえますか?」
「ん? サンタは辞めてアイドルになりたくなったか?」
「そうじゃないですけど……そうだって言ったらどうしますか?」
「うーん。俺は今担当してる女の子だけで手が一杯なんだ。
 この先もそれはずっと変わらないだろうから、プロデュースして欲しいって言われても難しいかな」
「……よかった。そういうお願いじゃないです。でもそれも守ってくれると嬉しいです」
「それ以外のことなら構わないぞ。お願いってなんだ?」
「私ひとりじゃ、自信もってファンの皆さんにプレゼントを届けるのは難しいです。
 サンタさんと一緒にお仕事をするパートナーになってくれませんか?
 そうしたら私は、ずっとあなたのソリに乗ってお仕事にいくことができます」


雪歩は小さな箱を差し出しました。キラキラ光るそれはPのネクタイを挟みました
鈴をつけられたトナカイは、隣にサンタを乗せたまま、再びソリの運転にもどりました

クリスマスイブが終わるまでは――2人はまだ一緒に仕事を続けることができました

***

クリスマスイブがやってきました
みんなのところにプレゼントが届きました

***

青い車にのった女の子が、ケーキの箱を抱いてイルミネーションを眺めていました
オレンジのトレーナーの女の子が、家族の待つパーティー会場にたどり着きました

赤いリボンの女の子が、焼きあがったホットケーキを空中でターンさせていました
ピンクのマフラーの女の子が、満足そうな様子でブティックから出てきました

黄色い髪飾りの双子が、シロクマ手袋をあわせて楽しくダンスを踊っていました
グリーンのコートの女の子が、欲しかったシステム手帳とようやく再会していました

ダークブラックのスーツの男性が、いそいそとサンタの衣装に袖を通していました
紫色のショールの女性が、澄んだ音をたてて乾杯のグラスを鳴らしていました

黒いブーツの女の子が、鏡に映っている女の子をキョトンと眺めていました
雛色のミトンの女性が、ほんの少し怒りながら誰かと電話で話していました

ライムグリーンのブランケットを被った女の子が、うたた寝からようやく目を覚ましました
白い帽子の女の子が、クリスマスの街をゆるやかに凱旋しながら帰ろうとしていました

***

クリスマスイブがやってきました
今日は白い帽子の女の子の誕生日でした

クリスマスイブにちょっとだけ幸せになったみんなも
そのことはちゃんと覚えていてくれました

クリスマスイブがやってきました
雪歩のところに11個のプレゼントが、空を飛んで届きました

***

「あ、プロデューサー。いっぱいメールがきてました。みんなからお祝いのメールです」
「だって今日は雪歩の誕生日じゃないか」
「……プロデューサー。私はやっぱりちょっとまちがってましたか?」
「何をだ?」
「サンタさんになってちょっと勇気のある女の子になれたつもりになるんじゃなくて、
 やっぱり私が勇気のある女の子にならなきゃ何も変わらないのかなって……」
「事務所のみんながお祝いしたいのは、サンタの方じゃなくて雪歩だからな。
 さっきのステージだって、ファンのみんなは、雪歩だってちゃんとわかってくれてたと思うぞ」
「ええ?……じゃあニセモノのサンタさんだってバレバレだったんですか?
 こ、こんなダメダメな私はサンタさん失格です……ダメダメサンタですぅ……」
「なんだなんだ。サンタの方がダメダメなら、アイドルに戻るしかないじゃないか」
「あれ?……やっぱりその方が向いてるんでしょうか?」
「その方が自然だろ。一年中活動もできるし、いつもサンタ帽かぶってる必要もないし、それに」
「それに?」
「さっき頼んだじゃないか。――プレゼントを渡したいのはサンタの方じゃないんだ」


Pは小さな箱を取り出しました。キラキラ光るそれは雪歩の指にぴたりと填まりました
アイドルに戻れた女の子は、とてもとても嬉しそうな顔をして、プレゼントを受け取りました

クリスマスイブが終わってしまっても――2人はずっと一緒に仕事を続けることができました





【考察】雪歩スレ29-259・260 投下日:2008/12/24

クリスマスSSの中ではラストになります。
後半パートはそれを受けて全キャラのエピローグを貰った形になっています。
オールスターになってからは少し駆け足気味な印象があるのですが、
どうにか当日中に間に合わせることができました。

1年前のクリスマスSSと、ネタも展開も同じような流れにしています。
2007年は雪歩とPと小鳥さんの3人が出演するクリスマスでしたが、
2008年は雪歩とPとオールスターが出演するクリスマスを書きたいと思いつき、
一度も書いていないアイドルを突然扱うには不安があったため、
今回のクリスマス連作を決めました。

誕生日のアイデア先行で、各キャラスレへの投下が決まった形になります。
キャラによる自分の得意不得意がわかったこともあり、いい経験になりました。
機会があればまたやってみたいと思います。
00:00  |  雪歩  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2008'09.12 (Fri)

一番星

「おはようございます、社長」
「おお、萩原君じゃないか。熱はもう下がったのかね?」
「ご心配をおかけしてすみませんでした。
 せっかくのライブも、私だけ欠席してしまって…」
「…うむ。残念だったのは確かだが、おちこんでいる暇はないぞ。
 先のライブで公表済みだが、新ユニットでの活動の件は聞いているかね」
「あ、はい。伊織ちゃんに呼ばれて、これから会議室に集合なんです。
 プロデューサーが出かけているから、4人でミーティングをしようって」
「それはいい。そうだ、萩原君に先日の映像を渡しておこう。
 会議室のモニターで目を通してごらん。きっと参考になると思うよ」

***

「さて、雪歩もそろった事だし始めましょ。
 なんたってこの私がいるんだもの。うちがダントツで無敵なスターなのは当然よね」
「いおりんいおりん。そういえばワンダリングスターってどんな星なの?」
「あっ、真美も知りたい! きっと超カッコいい意味があるんだよね!」
「そうねぇ。『wandering』には『さまよう』とか『うろうろする』って意味があるけど」
「……え~。ふらふらしてる星だなんてカッコ悪いよ~。
 パーフェクトスターとかミッシングスターの方がカッコよくない?」
「な、なに言ってんのよ! ダサい名前だなんて、そんなはずないわ!
 ねぇ雪歩。雪歩はもっと他の意味があるって思わない?」
「え。わ、私?」
「私たちを象徴するような、セレブリティあふれるチャーミングな意味があると思うのよね」
「…うーん…うーん…ふらふらしてる星……ふらふら……
 …のろのろ……ダメダメ…がっくり…しょんぼり……ぐすっ…
 こ、こんなダメダメな私は、穴掘ってセンターポジションから撤収しておきますぅー!」
「ちょっと雪歩、スコップなんて一体どこか――きゃーっ!!!」

***

「ただいま戻りました、社長。
 外で亜美たちを見かけましたが、ミーティングは終わったんですか?」
「いや。ちょっとドタバタしてしまってね。一時中断になったようだ。
 なあ君、星というものは、やはり数がないと話しにならないものかね」
「えっ?」
「天海君が太陽、如月君が月としよう。どちらも単独で空を賑わすには十分な逸材だ。
 だが星は――どれだけ頑張っても、それひとつで空を輝かすことは難しいだろう?」
「……雪歩がそう言ったんですか?」
「彼女はソロだからね。すこし思うところがあるんだろう。
 いちばん年上で、かつセンターを任されたが故に、いろいろと気負ってしまったかもしれん。
 自分が座ってしまったせいで、席に座れなかった子が存在することもね」
「でもそれは、別に雪歩が悪いわけじゃ…」
「ああ、もっともだ。だがうまい言葉を見つけられなくてね。
 あの子たちならきっと、銀河を自由に飛び回るスターになれると思っているんだが……」


Pが会議室のドアをそっと開けると、小さな後姿と、大きな画面が目に入りました
自分がいないそのライブを、雪歩は黙ってじっと眺めていました

“ソロでは輝けない”と言われて、Pは何も反論できませんでした
最初に雪歩を選んだのはPでしたが、彼はまだ1人を担当するだけで精一杯だったのです

かける言葉に迷ったPは、静かにドアを閉めました
アンコールの曲が終わるまで、ずっと廊下で立ち尽くしていました

 
数時間のライブが終わり、お茶が冷めてしまっても、雪歩はモニターを眺めていました
しばらく黙って何かを考えていた雪歩は、聞きなれた声に気づいてドアを振り返ります

『もう伊織のお迎えの時間ですか。じゃあ、俺がちょっと捜してきましょう』

Pがいつから外にいたのか、雪歩はちっとも気づけませんでした
慌てた顔でドアの前に立った雪歩を迎えたのは、Pではない初老の紳士でした


「ふう、実においしいお茶ですな。執事の私が用意してもらうだなんて、恐縮しきりです」
「新堂さんにおいしいって言ってもらえて、私は嬉しいですよ」
「すこし笑顔がもどられたようですな。何かあったのですか?」
「ちょっと考え事をしていたんです。
 …お陽さまもお月さまも、1人だって空を明るく照らせますよね。
 でも、星じゃそんなこと出来ないんだなって」
「ほう?」
「そんなふうに考えてたら、プロ…えっと、新堂さんが」
「なるほど。では、おいしいお茶のお礼に、老人の小話をお教えしましょう。
 たったひとつで空を独占できる星があると言ったら、信じていただけますかな?」
「えっ…?」
「なあに、簡単な謎々にございますよ。他より少しフライング気味な星のことです」
「あ。わかった、一番星ですか?」
「地球から見て、変則的な動きをもつ星が、いくつかありましてな。
 その様子から空を遊ぶ星とも、空を惑う星とも呼ばれているのです。
 一番星とよばれているあの星も、惑星のひとつにございます」
「惑星?」
「ええ。私にとっての伊織お嬢様が、絶対たる一番星であるように、
 雪歩様もまた、一番に目を留められたのではありませんか」
「え? でも私にそんな人は――」

「お待たせしました、新堂さん。伊織を連れてきましたよ。
 ……ん? どうした雪歩。熱でもあるんじゃないのか、顔が真っ赤だぞ?」
「送ってさしあげたらいかがでしょう。なにしろワンダリングスターですからな。
 お嬢様ひとりでは、ふらふらとさまよって迷子になってしまいます」

***

「ねぇ新堂。雪歩は大丈夫かしら。また熱がぶりかえしたんじゃない?」
「プロデューサーさんが送り届けると言っておられました。
 それに、伊織お嬢様のお心遣いが届けば、すぐにお元気になられますよ」
「…当ったり前じゃない。なんたってこの伊織ちゃんは愛と美の女神さまだもの」
「おっしゃるとおりにございます。ヴィーナスの別名は、神出鬼没な2つの明星。
 明けの明星に宵の明星とは、まさに亜美様と真美様のようですな」
「モーニングスターとイヴニングスターってことよね。
 金星が多彩なのはよくわかったわ。でも雪歩はどうかしら?
 ワンダリングスターが惑星のことなら、土星や地球のほうが相応しいんじゃない?」
「ではひとつ、小話をいたしましょうか。――ほら、ちょうど日も暮れて参りました」

***

「……うーん、わからないな。ソロで輝く星なんて本当にあるのか?
 星は一斉に光ってるじゃないか。ひょっとして水瀬家の人工衛星じゃないのか?」
「新堂さんはちゃんと見つけてましたよ」
「俺はあまり天体に詳しくないんだ。一年くらい眺めてれば見つけられるかもしれないけど」
「……じゃあ、これからいっしょに探しましょう。
 その星だってきっと、1人で頑張るより、見つけてもらったほうが嬉しいと思います」


雪歩はそう言って笑い、Pは不思議そうに首をかしげていました
助手席に一番星を乗せた車が走っていく様子を、夜空の金星だけが見届けていました





【考察】雪歩スレ25-732・733 投下日:2008/9/12

<ノルマ1:ワンダリングスター>
<ノルマ2:アイマスライブを欠席した雪歩>

PSP版が確定したのが、雪歩がお休みしていたアイマスライブ当日だったこともあり、
初期のプロットは、内緒でライブにきた雪歩と新堂さんが出くわす、というものでした。

太陽・月にくらべて星は一歩おとなしめなイメージ、という不安も混じり、
チーム内のパワー不足をどう逆転させたらいいものか、しばらく模索していました。

「wandering star」=「惑星」 という意味は、正式な訳ではなく捏造したものです。
訳すと「さまよう星」「うろうろする星」という、一層たよりないチームになってしまうので、
せっかくならもっとスケールの大きな星にしようと、遊星および惑星の名前を拝借しました。

金星はもともとネタに「一番星」を入れたかったこともあり、
一番星=金星 とわかってからは、連鎖的にキャラが当てはまっていきました。

伊織と新堂さんが実にいい働きをしてくれたので、投下前の不安は少なめでした。
初めて扱うキャラは、そのキャラのイメージを損ねないように、魅力を削らないように、
できれば次回以降も出てきてもらえるように、という気持ちになります。


伊織スレのSS職人「レシP」のSSに「Pleasant present」という作品があります。
一番好きな作品をあげるとするなら、迷わずこれを選ぶくらいお気に入りのSSです。
あの伊織と新堂さんの雰囲気が少しでも出せたらなあ、と考えながらこれを書きあげ、
スレに投下後「新堂さんGJ!」というレスを貰えたのが、
自分の好きな作品を褒められたのと同じくらい嬉しかったです。
00:00  |  雪歩  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2008'07.11 (Fri)

願いごと

「あら、プロデューサーさん。星占いですか?」
「暇つぶしに、あずささんに借してもらったんです。
 流石にオーディションの合否まで運勢に左右されるわけにはいきませんけど」
「足りない実力をカバーするのは、私たちの役目ですよ。
 アイドル候補生達を、とびきりのお姫さまにするのが765プロの仕事なんですから。
 そういえば、今日は雪歩ちゃんは?」
「第2回の新曲発表会の予定合わせに。
 今のペースだと、開かれるのは7月か8月あたりですかね」
「七夕の時期ですね。星に願いたくなるのも仕方ないわ。
 お姫さまはともかくとして、私にも素敵な王子さまが現れないかしら」
「お姫さまにもいろいろいますからね。眠ってるのも人魚なのも月に帰るのも…」

「ただいま、諸君。ようやくプランがまとまったよ。
 暑いからって落ち込んだ顔をせず、はりきって仕事にとりかかってくれたまえ」

***

「今日の私はダメダメでした…明日もきっとダメダメですぅ…」
「あらあら、雪歩ちゃんたら。星占いでダメダメな日が続くことはないのよ?」
「あずささん。でも、私、千早ちゃんとデュオを組むことになっちゃって…
 今日みたいにまた、レッスンの足を引っ張っちゃうんじゃないかって思うと…」
「千早ちゃんは歌のことで誰かを否定したりなんかしないわ。
 自分の歌に対しては、とても真面目で厳しい子だけれど、
 お互い足りないものを補えたら、とても素敵なデュオになるんじゃないかしら」
「はぁ…。お星様にお願いしたら、ちょっとでも歌が上手くなるでしょうか」

***

「千早。まだ事務所に残ってたのか。もうレッスン室は閉められただろう?」
「萩原さんと屋上にいたんです。発表会まで、もうあまり時間もありませんし。
 部屋に籠もってしまうよりは、外に出たほうがのびのび歌えると思って」
「あんまり無理はするなよ。
 2人とも時間を忘れるまでレッスンに根を詰めるからな」
「ありがとうございます。萩原さんはまだ上にいると思いますよ」

「……あ。プロデューサー」
「居残り熱心なのは構わないけど、屋上でうたた寝は風邪ひくぞ?
 “本番までに雪歩の風邪が治りますように”なんて願いは笹に吊るしたくないな」
「ごめんなさい。…なんだかぼーっとしちゃいました。
 千早ちゃんみたいに上手にできなくて」
「そりゃそうだろう。雪歩は雪歩で、千早じゃないんだから」
「千早ちゃんの願い事ってなんでしょう?」
「そうだなあ。それは千早じゃないとわからないかもな」


――願い事を叶えるのは、箒星だけではありません

“わたしには勇気がないんだ。百獣の王なのになんて駄目で情けないんだろう”
“わたしと一緒に行きましょう。オズの魔法使いに願いを叶えて貰うの”

臆病なライオンは、目の前の女の子をキラキラした宝物でも見るように眺めました

“きみの願い事はなんだい?”
“わたし、故郷のカンサスに帰りたいの。そこにはわたしの家族がいるんだもの!”

――それは遠い遠い世界の、ライオンと女の子のおとぎ話
 
叶う願いも、叶わない願いも。笹に吊るされ、星の下で揺れて
ある時ふと屋上で、雪歩は千早に尋ねました

「千早ちゃんは短冊に何をお願いしたの?」
「私は書かなかったわ。書いたらなんだか、代わりにまた何かを失う気がして」
「書かなかったの? でも、願い事はあるんだよね?」
「ええ。逢いたい人がいるの。でも今はまだ逢えないの。
 もしも本当に願いが叶うのなら、私は歌えなくなっても構わない」
「えっ!?」
「でも、やっぱりそんなこと有り得ないわね。
 歌わなくなった私なんて、きっと誰も必要としないもの」
「……そんな事ないよ。千早ちゃんは千早ちゃんだもん。
 歌わなくなったくらいで要らなくなるくらいなら、そんなの大事な人じゃない」
「……萩原さん?…ごめんなさい、怒って…」
「そんな願い事なんかしないで。…だって、千早ちゃんは、人魚姫でもなんでもないのに…!」

***

「珍しいな。雪歩がステージと離れたところで熱くなるなんて」
「…だって、千早ちゃんが…」
「千早の逢いたい人は、たぶん空のうんと高いところに居るんだ。
 星になったら逢えるかもしれないけれど、千早はそんなに弱い子じゃないよ」
「……え?」
「天の川も、流れ星も。ランプの精が現れても、サンタクロースが来ても。
 どんなに偉い神様だって、千早の願いは叶えられないんだ」
「…そんなの酷いです…」
「でも、雪歩には叶えられるかもしれないよ。
 その為にはまず目薬がいるな」
「……目薬?」
「だってそうだろ? 目が赤いままじゃ謝りにもいけないじゃないか」

***

「ねぇ、萩原さん。ステージの上には何があるの?
 ステージの上にあがると、萩原さんは別の人みたいに変わるから。
 いつもの萩原さんじゃなくて、活発で勇気がある子に変身しちゃうみたい」
「う、うん。…自分でも良く覚えてないの。いつも迷惑ばかりかけてるの」
「そんなこと無いわ。私は隣にいて、ちょっと不思議に思ってただけ。
 袖で見ているよりずっとずっと輝いてた。
 きっと、いつも夢を見てるのね。ステージの上にあがると目が覚めるんだわ」
「夢?…私、早く寝ちゃうから、居眠りはそんなにしないよ?」
「3人が帰ってくる。さあ、行きましょう。
 悪いリンゴの夢も、ステージの上ならきっと覚めるわ」


「良かった。あの2人はどうやら立て直したようだな」
「燃え尽きるのは星の最期ですからね。あの2人はまだ輝き始めたばかりですよ。
 軌跡が尾を残していくなら、3度願いを繰り返すことだって容易いでしょう」
「何を願おうか。我々に祈る時間はいっぱいありそうだが」
「そうですね。……強いて言うなら、今夜の空が晴れていてくれれば――」


太陽が6000℃の熱をもって地上を照らす真夏
会場が大いに盛り上がる中、空には星が姿を現していました

夜空の黄道を、ライオンが駆けるその先には、1人の美しい娘がいます
茶色い鬣を懸命に揺らして駆けてくるライオンと共に、少女は舞台に上がります

しし座のレグルスは13000℃の、おとめ座のスピカは27000℃の高熱の一等星
もっとも熱を帯びた青白色の二つ星が会場を灼熱の熱気に包みこむまで、あと僅か――





【考察】雪歩スレ22-397・398 投下日:2008/07/11

<ノルマ:ML04(inferno)>

ML02に続いて04でも千早と組むことになったので何か…と考えすぎて
テーマを詰め込み過ぎてうまくまとめきれなかった印象があります。

・inferno(雪歩+千早)
・夏の黄道12星座(しし座+おとめ座)
・オズの魔法使い(ライオン+女の子)

inferno=灼熱=高温=最も温度の高い星=おとめ座のスピカ
=夏の12星座=しし座とおとめ座=オズの魔法使い=勇気のないライオン
=勇気が欲しいライオン(雪歩)+家族のいる場所に戻りたいドロシー(千早)

1テーマから複数のテーマを作ろうとした結果、結合力が薄まる一方になってしまい
強引にネタをつなげるのはよくないな、と感じた作品です。

これ以降、中に込めるテーマはひとつかふたつを目安にしています。
何度も読み返さなくても、テーマがすんなり受け入れられる文章を模索していました。
00:00  |  雪歩  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑
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