All archives    Admin

03月≪ 2017年04月 ≫05月

123456789101112131415161718192021222324252627282930

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--:--  |  スポンサー広告  |  EDIT  |  Top↑

2010'10.02 (Sat)

ユメノカイダン

晴嵐改さんのイラストに、SSをつけてみました。

※60行

*****

【More】

「社長。コーヒーを淹れたんですけど、いかがですか?」
「おや、ありがとう律子君。事務のアルバイトと言いつつ、雑用ばかり任せて、すまないね」
「これも夢への第一歩ですから。バイトに雇ってもらえただけで、充分ですよ」
「律子君は、マネージャー志望だったね。なんだか、若い頃の私を思い出すな」
「私も、いつか独立できるかしら。社長と違って、キャリアはゼロに等しいけど……」
「諦めることはないよ。私より、律子君の方が優れている一面だって、あるのだからね」
「本当ですか? どんなところかしら」
「うむ。では……おいしいコーヒーのお代わりを、もう一杯いただけるかな?」

***

「律子君。少し仕事の手を休めて、お茶にしないかね」
「あ、すみません社長。いただきます」
「アイドルになったというのに、あいかわらず律子君は、事務仕事に熱心だね」
「ステージの上も魅力ですけど、ステージを降りた所にも、私の夢が転がっていますからね」
「きみのプロデューサーが驚いていたよ。律子君が、世界進出まで公言してきたとね」
「乗りかかった船を、適当なところで降りるなんてこと、できませんから。
 私がトップアイドルになるまで、もうひとつの夢は、当分お預けです」
「ああ。それまで私が責任を持って、律子君の夢を預からせてもらうよ。
 その頃には、別の杯を交わせると良いのだが」
「ふふっ。そうですね。いつか社長と笑顔で乾杯できる日が、楽しみです」

***

「コーヒーを淹れてきたよ、律子君。私宛ての大事な相談とは、何かな?」
「活動停止の話を受けて、決めました。……私、765プロから離れようと思います」
「独立の話か。ずっと、律子君が望んでいた夢だったね」
「ええ。でも、お世話になってきた社長に、何も返せないことが、心苦しくて」
「そんなことはないよ。私の夢は、みんな律子君が持ってきてくれたからね」
「えっ?」
「きみが、アイドル候補生になってくれたのも、トップアイドルになってくれたのも、そうだ。
 765プロは、私の予想を超えて、うんと立派な事務所になった。
 私は、自分の夢を叶えてもらっておきながら、ずっと律子君の夢を返しそびれていたのだよ」
「……正直、反対されるかもしれないと思っていたんです。たった一年で独立だなんて」
「心配は無用だとも。律子君が夢を叶えようとするのならば、私は、喜んで返すつもりだ。
 ここを去られるのは寂しいけれど、きみにはもう、夢を聞いてくれる相手がいるだろう?」
「ええ。ちょっと頼りないけど、社長に似て、いい社長になってくれると思います」
「なら良いんだ。私もおいしいコーヒーを淹れられるようになった。――乾杯してくれるかな?」

***

「おーい、律子。引越しの荷物は、これで全部か? 運び忘れは無かったかな」
「ああ、いけない。私、前の事務所にカップを置き忘れてきちゃった」
「そう言えば、765プロから小包が届いてたな」
「どれどれ?……あ。社長からだわ。私とあなたのカップみたい」
「でも、これ、俺が使ってたカップじゃないぞ。わざわざ新品を贈ってくれたのかな」
「そうね、引越し祝いのつもりなのかもしれないけど、でも――」


大きなマグカップでした。中身をたっぷり入れられそうなマグカップでした。
たっぷり入った中身のぶんだけ、夢の話を続けられそうなマグカップでした。

大きなマグカップを手にした律子は、そこに何を入れようか考えていました。
夢を語った相手の顔が浮かびました。今まで語った夢を思い出していました。

そして律子は、自分と彼のカップが届かなかった、本当の理由を悟りました。


pixiv002


「 “また、いつでも顔を出しにおいで” ってことじゃないかしら?」


                             (おしまい)
21:00  |  律子  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

感情の機微

序盤、丸っ切り会話文だけで進行しながら、過去を振り返り未来を巡りと言う文字通り「階段」の昇り降りをしながら、少しずつその時が近付いていくのを感じさせる、二人の「会談」。その中に込められた感謝の言葉、祝福の言葉。そうしたものが綯い交ぜになって、実はあの事務所のマグカップにはいつも詰まっていた。

だから、「いつでも帰っておいで」と思えるだけの何かを、一度過去のモノとして整理をつけて、物語はまた、新たな局面を迎える。そんなキーフレームになる境界点にあったマグカップ。なんだろう、君が幸せに見せる。

いいプロデューサーになるといいね――律子さん。
微熱体温 | 2010年10月03日(日) 01:04 | URL | コメント編集

>微熱体温さん

コメントありがとうございます。skypeでもお話ししましたが、
こちらにも感想を頂いて感謝です。しばしお付き合いください。


全文通して、作中のキーワードに使用したのは「マグカップ」でした。
マグカップAで思い出を作っておいて、マグカップBを贈る、という仕掛けを施したことになります。
最後のシーン、あのイラスト一枚で、どれだけのことを振り返ることができるだろう。
どのくらいの思い出を振り返れるだろう?と思いながら、イラストまでの流れを詰めこみました。


>「階段」と「会談」

律子は非常にいろんな面を持つキャラで、学生・アルバイター・アイドル・プロデューサーと、
そのスタンスは目まぐるしく変化します。立場が変われば夢の形も変わり、その受け皿として、
「元プロデューサー」である社長を呼びました。律子が進むだろう道を見据えつつ、過去も語れる人物です。
二人はコーヒーを傍に、会談を繰り返します。カップの中に思い出を込め続け、結果的にそれは
「律子の居場所」に該当することになります。カップがある場所に、律子は戻ることができるのです。


>君が幸せに見える。

読んでそう思って頂けると、書いて良かったなと思えます。ありがとうございます。
幸せな律子が見たくなって書いたようなSSです。
プロデューサーになってからも夢を語り続けられるといいなと思います。

コメントどうもありがとうございました!
寓話 | 2010年10月03日(日) 03:06 | URL | コメント編集

最近ずっと続いていた、フルコースのような長編もいいですけど、短くとも味わい深い今作もとってもいいですね!

自分の好きな765プロとあの世界は、こんな魅力的な高木社長がいてこそ成り立っているんだなあとしみじみ思います。台詞の一つ一つが徳丸さんのCVで脳内再生余裕でした。

自分は律子に対して、Pのような近い位置ではなく、今作の社長のような距離感でいるのかな…とも読後に気づかされました。目標に向かって進む彼女の聡明さを知っているから、隣ではなく「遠くから見守る」気持ちになるのかもしれませんね。

こんな感じのボリュームの作品も、またお待ちしております(*´∀`)
grossa | 2010年10月05日(火) 01:38 | URL | コメント編集

>grossaさん

2010年に入ってから長編SSが続きましたが、
サクッと読める長さで「ふふっ(*´∀`)」と、なって頂きたい
……という信念は、スレ職人時代の頃から変わっておりませんw

今回は、晴嵐改さんのイラストありきの作品になっております。
物思いにふける律子の表情が、とてもとても印象的だったので、
その印象を大事にしながら、SSをひとつ考えてみました。
味わい深さが滲み出ていてくれたら、とてもうれしいです。


>魅力的な高木社長

自分は雪歩推しですが、高木社長も大好きです。
P視点とも違う、父親的な視点で会話ができるキャラクタなので、
「Pとアイドル」とは違ったトークができるのが魅力的ですね。
765プロが765プロであるのも、高木社長ありきなんだろうなーと思います。


>目標に向かって進む彼女の聡明さを知っているから、
>隣ではなく「遠くから見守る」気持ちになるのかもしれませんね。

コツコツ目標を目指す姿が、なにより素敵な律子なので、夢の形が何であれ、
「独立なんてしないで、765プロで立派なPになってくれたらいいのに…」とは
ちょっぴり思ってしまうところですw 夢を叶えて離れたあとも、いつでも
帰ってこれる理由があったらいいな、と思った結果が、こんな形になりました。
事務所を去っていった律子とPを、遠く離れた事務所から見守る高木社長ですが、
案外その距離感は、向かい合って挟んだテーブルくらいなのかもしれません。


>こんな感じのボリュームの作品も、またお待ちしております(*´∀`)

ひさしぶりに短編を書いて、自分でも「楽しく書けたなー」と思えたSSです。
サクッと読めるSSも、またコツコツ書いていこうと思います。
読んでくださってありがとうございました!
寓話 | 2010年10月05日(火) 16:42 | URL | コメント編集

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://allegoryfactory.blog34.fc2.com/tb.php/102-62aca56c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。