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2008'03.06 (Thu)

魔法のティアラ

「小鳥さん、雪歩たちはもう会場に向かっちゃいましたか?」
「あっ。今行っちゃったところですよ。
 何か用事でもあったんですか?」
「いや、ならいいんです。衣裳室に忘れ物があっただけですから。
 あとで会場に向かったら渡すことにしますよ」
「今日はオールスターの感謝祭イベントですものね。
 みんながバタバタしちゃうのも無理もないわ」
「俺は代表の方と一緒だから、少し気が楽ですけどね」
「あら。あの子たちだけじゃなくて、私のサポートもお願いしますよ?
 社長と一緒に遅刻なんてしてきたら許しませんからね」
「了解しました。一足先に会場で待っててください」

(……そういえば、社長、トイレにいくって言ってずいぶん経つな……)

***

「――もしもし小鳥さんですか?…はい。あの、約束を守れなくてすいません。
 今タクシーの中です。向かってはいるんですが、渋滞が酷くて」
「私に代わってくれるかね」
「あっ、はい。社長に繋ぎます」
「…オホン。もしもし音無君か? 心配かけて済まなかったな。
 貧血を起こして少しばかり倒れ込んでしまったんだ。
 つい今しがた、彼と一緒に病院を出てきたところなんだよ。
 ……ああ、そうだ。それでいい。
 あの子たちに余計な心配などかける必要はない。
 いつもの事ではあるが、君にはいろいろ負担をかけてしまったね」
「運転手さん、次の脇道を使ってもらえますか?
 遠回りになるけど、会場にいける道がそっちにもあったと思います。
 あの子たちも移動に使ってる、あまり車の通らない道なんですが」

「君が手に持っている、それは何だね?」
「雪歩の忘れ物です。…でも、もう必要ないかもしれません」

***

「雪歩ちゃん。お返事のテープ、録音できた?」
「…はい」
「これで今日のお仕事は終了ね。あとは私に任せておいて。
 お母さまが外で待っているんでしょう」
「あの、小鳥さん。…プロデューサー、来てましたよね?
 今日のライブ、きっと観客席で見てましたよね…?」
「……ええ、見てたわよ。遅刻してきて、社長と一緒に盛り上がってたわ。
 はしゃぎ過ぎてうるさかったから、後で私がよく叱っておくわね。
 今日は本当にいいライブだったわ。お疲れさま」
「はい。お疲れさまでした」

会場のそばの道を、2台のタクシーがすれ違っていきました
ひとりは携帯を、ひとりは忘れ物を手にずっと俯いていたので
2人が互いに気づくことはありませんでした

忘れ物はPが雪歩に初めて贈ったプレゼントでした
だけど今はもう、あまり使われることはありませんでした

レプリカの冠を前にしたPは、その時気づいてしまいました
世界にひとりだけのアイドル達や社長と違って、
所詮はスペアが役目を果たせる存在なのだと――


アクシデントだらけの感謝祭も終わり、彼女たちは各々の仕事に戻っていきました
冠の存在は、あの日感じた棘と同じくらい簡単に、Pの頭から抜け落ちていました

それから数日たった、あるライブの日のことです

(おかしいな…もうすぐライブが始まるのに、雪歩はどこへ行っちゃったんだ?
 今日は社長も見に来るって言ってたのに…)

「あっ。プロデューサー」
「…やっと見つけたぞ。衣裳室にいたのか。一体何をしてたんだ?」
「ティアラが見つからないんです。……いつもちゃんとあったのに」
「あれ、今日は使わないよな?
 この前だって確か、小鳥さんがスペアを用意してくれてたんだろ?」
「…でも…やっぱりあれじゃないと…」
「……あの冠なら、俺の荷物と一緒にカバンの中だ」
「本当ですか!?」

「――良かった。みつかって」
「随分必死に捜してたんだな。早く教えてやればよかった。
 本番に使うことなんてほとんど無かったじゃないか。
 それとも、ライブが成功する魔法でもかかってるっていうのか?」
「魔法はずっとかかってますよ」
「えっ?」
「だって、普通の高校生だった私が、
 あんなにたくさんのファンがいるアイドルになれたんだから」
「……ああ、そういうことか。でもそれは魔法なんかじゃないよ。
 今日来ている大勢のファンだって、集めたのは雪歩の力だろ。
 気づいてなかっただけで、雪歩には元々それだけの力があったんだよ。
 俺もその冠も、最初からなんの魔法もかけちゃいないんだから」
「でも、プロデューサーがこれをくれなかったら
 ダメダメだった私は、まだダメダメだったままかもしれません。
 …今もまだ、そんなに直ったわけじゃないけど…」
「じゃあ、魔法を掛けたのは、俺じゃなくて雪歩の友達なんじゃないか?
 だってこの世界に雪歩を連れてきたのは、あの子なんだからさ」
「それは…そうかもしれないけど、でも――」
「ほら、もう時間だ。ステージに行かなきゃ。
 あんなに沢山のファンをいつまでも待たせちゃいけない。
 今日は雪歩がファンに魔法をかけてこなくちゃ」
「……じゃあ、今度は、私が魔法をかける番ですね」
「うん、そうだ。だからもう行っておいで。
 それは預かっとく。…いや、いいよ。そんなもの俺には似合わないから」
「そんなことないですよ。きっと似合うと思います。
 プロデューサー。…ちょっとだけ屈んでもらえますか?」

***

「おや…今すれ違ったのは萩原君か…?…ずいぶん勢いよく飛び出していったな。
 ……あっ。君、どうした? まさか貧血でもおこしたのか、口元など押さえて――」


飛び出していった雪歩が、今まさに会場を銀河に変えようとしていた頃
別の魔法にかかっていたPは、目の前にチカチカした星をたくさん見ていました

嵐のような声援も、観客席のライトの海も
彼は未だ見に行くことさえできませんでした
立ち上がろうとして、コトリと冠が落ちて――笑ってそれを拾い上げました

雪歩はPに一瞬で2つの魔法をかけていきました
“代わりなんてどこにもいませんよ”と無邪気な目に言い聞かせられ
そしてもうひとつは――彼にとっては2度と解けることのない――






【考察】雪歩スレ17-53・54 投下日:2008/03/06

<ノルマ:L4U(=社長とPが不在)>

L4Uが市場に出て、ファン代表プロデューサーの存在にあちこち激震が走り、
「今までのPでライブを盛り上げられないのか…」という空気があった頃です。

・社長とPの不在理由はアイドルによってまちまち(小鳥さんが言い分けている)
・お姫さまティアラの説明文が原作とL4Uで異なる
このふたつのポイントに注目してSSを考えてみました。

展開的に負い目をくらっているのはPなので、まずPにポイントを絞り、
Pの視点でL4Uを眺めながら進めていくことにしました。

「フラグの作成/回収」はこの作品から意識するようになりました。
前半60行で立てたフラグを、後半60行で回収する、という手法です。

120行のなかであれこれやっていた頃は気づきませんでしたが、
60行でも30/30行、30行でも15/15行で出来る手法だと気づいてから、
無理に120行書くことは止めにしています。

公式の流れにあわせてSSを考えるようになってきたのも、この頃からです。
00:00  |  雪歩  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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