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2008'04.25 (Fri)

白い鳥

「おや。珍しいな、今日は事務所に君ひとりかね?」
「来月の感謝祭ライブの練習で、みんなレッスンに出払っちゃってるんですよ。
 よりによって雪歩が千早の曲を担当することになったらしくて」
「ああ成程。だから萩原君は、ジャージ姿であんなに慌てていたのか」
「蒼い鳥は千早の代名詞みたいなものですからね」
「うむ。おそらくオリジナルは如月君にしか歌いこなせないだろうな。
 しかし三浦君のような優雅な鳥もいれば、やよい君のような明るい鳥もいる。
 萩原君が来月のライブでどう表現してくれるのか、私は今から楽しみだよ」
「伝えておきますよ。きっと今日も遅くまで居残りだと思います」

***

「ごめんね千早ちゃん。掃除まで手伝ってもらって」
「気にしないで。萩原さん。
 ここでレッスンをしている方が、私にとっては充実した時間を過ごせるから」
「…ありがとう」
「アレンジとは言っても、他の人の持ち歌を歌うのは難しいわね。
 本来の曲のイメージが強いと、自分の歌い方がこれで良いのか不安になるわ」
「千早ちゃんでも歌うことが不安になったりするの?」
「もちろんよ。萩原さんは?」
「…私、自信持ってやれることの方が少ないから…
 こんなんじゃいつまで経ってもお父さんに呆れられちゃう」
「お父さん?」
「…お父さんは、私の仕事のこと、あんまり良く思ってないみたい。
 私が子供で何も出来ないから、頼りなく思っちゃうのかもしれないけど、
 いつか千早ちゃんみたいに堂々と歌えるようになったら、お父さんも認めてくれるかな?」
「…そうね。…きっと、そうかも知れないわ。
 ねぇ、萩原さん。蒼い鳥じゃないけど――願い事を叶える鳥は知ってる?」
「えっ?」
「白い鳥がいるの。別れてしまった恋人同士だって繋げられる、幸せを運ぶ鳥。
 ……蒼い鳥なんかじゃなくて、私はそんな鳥になりたかった」
「千早ちゃん…?」

「あら、雪歩ちゃんに千早ちゃん。まだ残っていたの? もう帰らなきゃ駄目よ」

***

「お疲れ雪歩。今日は一段と熱心な居残りだったな」
「プロデューサー。あの、…サンタさんみたいな鳥って、知ってますか?」
「サンタみたいな鳥?」
「千早ちゃんが教えてくれたんです。願い事を叶えてくれる鳥がいるって」
「青い鳥の童話じゃないのか?」
「白い鳥って言ってました」
「ふーん。何だろうな」
「なぞなぞみたいです。…でも、ちょっとだけ見てみたいかも」


本当にそんな鳥がいるのなら、勇気をもらえるかも知れません
頑固で厳しい父親だって、自分のことを認めてくれるかも知れません
答えの出ないまま、Pが運転する車は、雪歩の家に着いてしまいました

屋敷の庭から見上げた空は、もうすっかり暗くなっています
冬の星座はとうに消えていました。オリオンもシリウスも何処にも有りません
けれど探していた鳥はずっと――冬が終わった頃から雪歩のことを見ていました

「…もしもし、プロデューサーですか?…あの、私、見つけられたかもしれません…」
 

事務所でいちばん歌の上手な青い鳥は、遥か高みに広がる大空へ想いを馳せていました
事務所でいちばん自信のない白い鳥は、鳥篭の外に広がる無限の景色に臆していました

まるで鏡のように正反対な2人は、心の奥では同じ願いを抱えていたのです
互いにそうと気づけぬまま、とうとうファン感謝祭ライブの日がやってきました


(…ど、どうしよう…迷子になっちゃった…確かこっちから来たと思ったんだけど…)

「すいません、観客席にはどう行ったら良いのかな?」
「あ、えっと…私は…」
「ライブなんて見に来るのは初めてなんだ。
 本当に、私がこんな所に来ても良かったのだろうか…」
「他の人と一緒に来たんじゃないんですか?」
「いや、ここには1人で来たんだ。娘は私と一緒にいるのも嫌がるだろうから」
「そんなことありません。お父さんが嫌いな子供なんていないと思います」
「……ありがとう。君のお父さんはきっと幸せなお父さんだね。
 でも私は――私たちはあの子にとても酷いことをしてしまったんだ。
 いっそ遠く離れたところから、眺めるだけでも構わないんだよ」
「…………」
「ああ。会ったばかりの君に、こんな話は不躾だったね。
 本当は嬉しいんだ。あの子が私をこんな風に誘ってくれたんだから。
 例え一緒にいられなくても、これだけ大きなステージなら何処でも見られるよ」
「席はどこですか? 私にわかるなら、ご案内します」
「…連れていってくれるのかい?」
「……やっぱり離れ離れなのは寂しいと思います」

「雪歩!? 観客席の方で何をしてるんだ!?」
「あっ、プロデューサー。…あの、えっと、すみません。あの人を席まで…」
「…あの人を…?」
「良かった。隣の女の人とは知り合いみたいですね」
「…雪歩、とにかく急いで戻るんだ。小鳥さんも千早も真もみんな待ってる。
 一曲目から頭数が揃わないなんて、アクシデントどころじゃ済まされないぞ」
「は、はい! 行ってきます!」

***

「千早ちゃん、どうかしたの? さっきから観客席が気になるの?
 大丈夫、雪歩ちゃんはもうすぐ戻ってくるわよ」
「す、すみません! 遅くなりました。小鳥さん、千早ちゃん」

「萩原さん」

そのとき開演のブザーが鳴って、千早の言葉は歓声にかき消されてしまいました
何のことか聞き返そうとして、小さな手は引っ張られ、誰かに背を押され
雪歩はただステージに駆け出していくしかありませんでした


全てが終わったあと、空っぽになった会場で、雪歩はPに尋ねます

「プロデューサー。あの人はちゃんと女の子に会えてましたか?」
「…雪歩はあれが誰か知らなかったのかい?」
「?」
「大丈夫だよ。一夜だけでも願い事は叶ったんだから。
 だって千早は――あんなに幸せそうだったじゃないか」

はくちょう座のデネブは白い輪をもつ一等星
わし座とこと座の一等星を加えた夏の大三角は、七夕の代名詞です

離れ離れになった男女を逢わせてあげられる――銀河を渡る白鳥のお話です





【考察】雪歩スレ18-715・716 投下日:2008/04/25

<ノルマ:ML02>

プラチナアルバム(初期設定集)の雪歩ページをスレにうpしてくれた方がいまして。
入手自体諦めていたので、なにかお礼をしなくては!と気合いを入れてつくりました。

V4U発売決定の発表があったのもこの頃だったと思います。
当初は発売日が7月7日だったので、七夕ネタを差し込むことにし、
思いつくがままにプロットを考えました。

・織姫と彦星=別れた男女=千早の両親
・彦星はカササギ(鵲)に乗って天の川を渡る
・カササギ=白鳥座=白い鳥=ゆきぽ鳥

主軸:「離れ離れになった千早の両親を、雪歩が連れて行ってあげる」
条件:「両親の仲を取り持ちたかった千早が、ふたりに前もってチケットを渡している」
場面:「ML02の1曲目(千早+雪歩+小鳥)の前に雪歩が迷子になっている」

千早の最後の台詞が、個人的に気に入っています。
00:00  |  雪歩  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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