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2008'05.30 (Fri)

衛星通信

――2ヶ月前

「……友達にも言われたんです。
 いつもの私と、ちょっと雰囲気が変わったねって」
「そうか。萩原君に何も問題がなかったのなら別に良いんだ。
 ただ音無君も気にかけていた様だったから、私は少し気がかりだったんだよ」
「特別調子が悪かったとか、そういうわけではないんですけど……」
「もしも何かあったときは、いつでも私たちに相談しに来なさい。
 君のプロデューサーだって、きっと相談に乗ってくれるはずだよ」
「はい。ありがとうございます」
「呼び止めてしまって悪かったね。さ、皆のところに行っておいで。
 ひとりでも欠けてしまっては、折角のマーチングバンドが台無しだ」

***

――1ヶ月前

「ねーねー兄ちゃん。ゆきぴょんなんかあったの?」
「急にどうした亜美。また雪歩が埋まってたか」
「うん。…あっ、もしかしたらゆきぴょんも影武者とかいんのかな?
 亜美たちみたいに実は双子だったり?」
「いや雪歩は一人っ子だから影武者はいないぞ」
「やっぱそーだよね……。でも、亜美さっき聞いちゃったんだ。
 穴の中でゆきぴょんがゆきぴょんじゃないって言って凹んでたの」
「さっきまでは別に普通だったぞ?
 たしか真美と一緒に、衣装の採寸に行くって言ってたけど」

***

「ねぇねぇゆきぴょん。もう出てこよーよ。
 ウエディングドレス汚しちゃったら、ピヨちゃんに大目玉だよ?」
「……ねぇ真美ちゃん。私、やっぱりいつもと違うかな……?」
「えっ。どして!?」
「いつもとちょっと違うねって、みんなが言ってたの。
 お父さんも、かずちゃんも、社長も、小鳥さんも。
 いつもの私の声じゃなかったみたいだって……」
「真美はよくわかんないけど。ゆきぴょんはゆきぴょんなんじゃないの?」
「う、うん…。でも、いつもと違うっていうのは良くないことだよね……?
 ちゃんと歌えなくなっちゃったら、もうアイドル失格だよね……」
「なーんだ。ゆきぴょんはそれがずっと心配だったの?
 だったら大丈夫だよ。だって、真美たちいっつも変な声ばっかりだしてるよ。
 ゆきぴょんはゆきぴょんだから大丈夫。だから行こっ☆」
「真美ちゃん……」
「ねぇゆきぴょん。今日は真美と一緒の花嫁さんなんだから笑って?」


雪歩は頷きました。けれど胸の奥の不安は消えませんでした
ぐるぐると渦巻く不安は、いつしか深くて暗い穴になりつつありました
嬉しいことも楽しいことも、ブラックホールのように全部飲み込まれてしまうのです

いつも埋まって安心できる穴とは違い、その穴はたくさんの不安で溢れていました
1度穴に落ちてしまったら、2度と出ることは叶わないかもしれません
暗くて底の見えない大きな穴が、ちっぽけな雪歩に向かって囁きます

“ダメダメな歌声しか出せないダメダメなアイドルなんて、もう誰からも必要とされていないよ”と――
  
本当はPに打ち明けたかったのです。抱える不安を聞いて貰いたかったのです
けれど自分の不安がそっくり返ってきたらと思うと、一歩も動けなくなってしまいました
それはステージの失敗よりもずっと怖いことのように思えました

独りぼっちで宇宙に飛び出して、頼りにしていた無線が突然切れてしまうような――


どうしてもその穴を埋められずにいた雪歩は、ある日Pと一緒にスタジオに向かっていました

「まだどこにも非公表な衣装みたいだけど、夜のステージに借りる了承は貰えたぞ。
 小鳥さんの期待に応えられるよう、頑張って宣伝してこような」

「も、もうすぐリハーサルですね……」
「雪歩。もしダメダメって言われるのを懸念してるなら、深く気にする必要なんてないぞ」
「えっ?」
「雪歩がダメダメアイドルだって言われたら、
 それはプロデューサーの俺がダメダメだってことなんだから」
「で、でも、それじゃプロデューサーが可哀想です。
 プロデューサーだって、ダメダメになっちゃった私なんかじゃなくて、
 ちゃんと歌えて、凹んで埋まらないで、ひんそーでひんにゅーでちんちくりんじゃなくて
 ダメダメじゃない私の方がぜったい良いはずです」
「今すぐダメダメじゃない雪歩なんて要らないよ。
 そんな完璧な雪歩が現れたら、俺は用済みになっちゃうじゃないか」
「……でも…もしかしたらずっとダメダメなままかも知れないし、
 プロデューサーが思ってる期待にだって応えられないかも知れません……」
「俺はまだ何も雪歩に期待なんてしていないぞ。
 雪歩は一体なにがそんなに不安なんだ?」
「じゃ、じゃあ、……プロデューサーは私のどういうところが不安なんですか」
「言ったら直してくれるのか?」
「…で、出来る範囲でなら頑張りたいですけど…」
「別に穴を掘って埋まるのはいいけど、雪歩が見つけられないくらい深い穴は困るな」
「……穴を掘るのをやめろとは言わないんですか?」
「うん。俺の目の届く範囲でなら、好きなだけ穴を掘って埋まっておいで」
「……本当にそれで良いんですか? 出てくるまでずっと待っててもらえますか?」
「納得いくまで安心できたら、雪歩はいつもちゃんと穴を埋めて出てこれるだろう?
 心配なんて要らないよ。雪歩が出られなかった穴なんて、今までひとつも無かったじゃないか」

***

「――やあ、君か。ちょっとスタジオにお邪魔しているよ。
 次のプロモーション映像で、誰をソロに抜擢するか検討している最中なんだ。
 リハーサルを見逃したのが残念だが、萩原君の調子はどうだね?」
「大丈夫だと思いますよ。どういう訳か、とてもとてもいい顔をしていたので――」


新しい衣裳に着替えた雪歩が、漆黒のステージに静かに現れると
足元から天井に至るすべての空間に、見る間に星が瞬きました

カメラを前にした雪歩が纏うのは、宇宙を飛び回るための白いスーツではなく
おうし座の散開星団プレアデスの意を籠められた、蒼く輝く銀河の衣裳です

星を見失っても、ロケットが壊れても、雪歩が強く望めばいつだってそこは銀河に変わりました

跳び出すことは怖くありません。空の彼方に独りぼっちでも大丈夫
宇宙の目印になれさえすれば、名も無き星だって北極星と呼ばれるのです


両腕を宙に掲げた少女が、カメラの向こうにいる相手に向かって視線で尋ね――

――目印に気づいた青年は、穏やかにその星を眺めていました




【考察】雪歩スレ20-510・512 投下日:2008/05/30

<ノルマ:L4Uで声質がつよくなった雪歩>

「ShinySmile」+「Do-dai」までが前半部、「my song」からが後半部になります。
「my song」は先の配信2曲にくらべて差異がすこし和らいだことと、
雪歩大宇宙!なPVが配信されたこともあり、取り上げやすい曲でした。

MA09寄りな声の印象を受けたので、Kosmos,Cosmosをイメージに配置し、
アストロガールと同時配信だったスバルザイホツノミスマルに白羽の矢をたて
UFOアイドルらしく銀河に跳び出してもらいました。

エピローグが若干助長気味なのが地力不足を感じさせます。反省しきりです。
00:00  |  雪歩  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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