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2009'06.19 (Fri)

太陽の鳥【fairyt@le】

「社長どこだー? オウムの散歩おわったぞー?」
「おお、ありがとう我那覇君。捜しものをしていて、君たちの帰りに気づけなかったよ」
「この子、大人しくてすごくいい子だなっ。オウ助よりお利口さんだったぞ!」
「なかなか外に出してあげられなくてね。今日はいい気晴らしになっただろう」
「自分、また散歩つれてくよ! あ、そうだ。ここにいる鳥って、この子だけ?
 黒井社長が欲しがってた鳥って、この子のことかな」
「……はて? この子はそれほど珍しいオウムではないが……」
「自分、前に聞いたことあるんだ。『あの765プロには勿体ない!』って言ってた。
 そんなに珍しい鳥がいるのかーって、自分、ずっと見てみたかったんだ!」
「そうだったか。ならば、それはおそらく、このオウムのことではないな。
 我那覇君には済まないが、あの鳥はもう、どこにもいなくなってしまったのだよ」
「えっ、いないの? そっかー。残念だな」
「もし我那覇君がその鳥に会いたかったのならば、少しだけ昔話をしようか」
「ホント!?」
「ああ。少し待っていてくれるかね。まずはこの書類を戻さなくてはならん。
 大事なオウムの散歩に行ってくれた、そのお礼をしなくてはね」

***

「待たせたね、我那覇君。お茶が冷めてはいないかな」
「うん平気! それ、どんな鳥だったの? 翼は立派? どんな声で啼くんだ?」
「あれは、実に見事な鳥だったよ。姿も声も、まさに七色の虹のようでね。
 大勢の人がこぞって褒めてくれた。あんなに素敵な歌声を、私はほかに知らないな」
「それって、やっぱり黒井社長も聴いてたんだよね。いいなあっ!
 そんなにすごい話を聞いちゃうと、ますます一目見たくなっちゃうよ!」
「ところで我那覇君。君は、金の卵をうむニワトリの話を、知っているかね」
「ん?…えーと、1日1つ、金の卵をうむんだよね。それで、大金持ちになる話だったっけ?」
「そうだ。やがて欲が出てきた男は、どんどんニワトリを急かすようになった。
 1日の卵が2つになり、3つになり、欲が止まらなくなった男は、こう考えたのだ。
 『このニワトリの腹の中には、さぞかし立派な金塊が入っているに違いない』とね」
「ええー!? なっ、何考えてんだ!? 大事な家族なんじゃないのか!?」
「結局、欲深い男は、ニワトリも卵も失うことになってしまったというわけだ」
「むー。すごくダメな飼い主だったんだなっ。そんな奴に飼われたニワトリが可哀想だぞ!」
「はっはっは。その通りだよ。そしてあの鳥の周りにも、そんな大人がたくさん居たのだ。
 私も黒井も、その中の1人だった。――鳥が居ない理由は、もう何となく解ってもらえたかな」

***

「音無君、書類保管庫のカギは、この場所でよかったかな」
「あ、はい。社長の捜し物は見つかりましたか?」
「いや……確かに一度見た気もするのだが、あれは私の見間違いだったのかな。
 顔も名前も覚えているというのに、あれだけが何処にも見つからないのだ」

***

「やいやいプロデューサー! ニワトリが可哀想だぞ! なんであんな酷い目に合うんだ!」
「い、いきなりどうした響。酷い目に合ってるのは俺のほうだぞ。
 社長のオウムの散歩から戻ったあとは、レッスンに行く約束だったじゃないか」
「う……そ、それはいろいろと深い事情があるんだ!」
「事情ってなんだ。そもそも、ニワトリって何なんだ?」
「悪い大人につかまってたニワトリだよっ。金の卵をうむニワトリ!
 働くだけ働かされて、最後には殺されちゃうなんてあんまりだぞ!」
「あれっ。そんな話だったか? 俺が知ってる話では、あれは助けてもらったはずなんだが……」


きょとんとした響は、すぐに続きをねだりました。詳細を知らなかったPは、響をつれて外に出ます
響から社長の話を聞いたPもまた、響と同様、疑問に思った点があったのです

「ここならきっと、ニワトリの話は全部わかるはずだ」そう言ってPは、とある建物に響をつれていきました

目的地を訪れた響が、やがてそこにPをつれて何度も通うようになっても
社長はずっと、捜し物をつづけていました

社長が響に鳥の話をしてから、何日か経ったある日のことです


「おや我那覇君。今日は何の御用かな?」
「社長、前に話してくれたよね。あの鳥は、欲を出した大人たちがダメにしちゃったって」
「うむ。それは本当だよ。だから私も、あの話を忘れないよう、常に自戒しているのだ」
「でもさ、自分、その話聞いたとき、なんか変だなーって思ったんだ。
 あんなにオウムに懐かれてる社長が、他の鳥に可哀想なことなんて出来たの?」
「黒井は君に教えていなかったかな。『高木はルールを破ってばかりの悪いやつだった』と」
「言ってた。黒井社長のルールって、結構きびしいのばっかりだもんね。
 それでプロデューサーと話したんだ。社長はやっぱり鳥を逃がしたんじゃないかって」
「どうしてそう思ったのだね?」
「ニワトリの話だよ。金の卵をうむニワトリでも、ちゃんと助かった子もいたんだぞ。
 プロデューサーが自分にきかせた話って、ジャックと豆の木だったんだ」
「おお。そういえば、あれはそんな感じの話だったな。
 豆の木をのぼって、いろんな財宝をうばってくる少年の話だろう?」
「ちがうよ社長。あれはドロボウしてる話じゃなくて、大事なものを取り返しにいく話なんだ。
 自分、図書館でぐーぐー寝ちゃったけど、大事なとこはちゃんと覚えてきたぞ!」
「ほう?」
「とってくる財宝は、ニワトリと金貨と竪琴で。閉じ込められた場所は、雲の上にある城なんだ。
 ね、社長。空で巨人が独り占めしてた財宝って、何の事なのかわかる?」

***

「…………天気かね?」
「大正解! すごいな社長!」
「空に存在できるものは限られている。ならば、ニワトリが象徴するのは太陽ではないかな。
 太陽は、財宝などではない。もとより皆の所有物ではないか」
「そーなんだよ! 太陽がなくちゃ困るし、雨も風も同じさ。だから何度も雲の上に向かったんだ!
 危ない目にあっても、豆の木をのぼったのは、それが本当の居場所じゃないからなんだって」
「そうだったのか。私はすこし勘違いしていたようだな。
 太陽を独り占めされた人々が、自分たちのところに天気を取り戻す話だったのか」
「それもあるけどさ。やっぱり、間違ってる場所に、居続けなくちゃいけないのは可哀想だよ。
 鳥のほんとうの居場所だって、鳥籠の中じゃなくて空の上だって思うし。それに――」
「それに?」
「わるい大人につかまってた自分を、あの場所から逃がしてくれたのは社長じゃないか。
 だから思ったんだ。社長は、その子のことも逃がしてあげたんじゃないかなって」
「……参ったな。我那覇君、まさか君は本当に、鳥の気持ちが理解できるのかい?」
「あはははっ! 自分、鳥なんかじゃないぞ? 765プロの立派なアイドルだよ!
 だからもう、その鳥の話は聞かない。秘密にしておく方が、その子は一番安全だもんね!」
「ありがとう。我那覇君。――本当にありがとう」

***

「音無君。カギを返しにきたよ。捜しものはもう終わったからね」
「あっ。とうとう見つかったんですか? 何年も前に見かけた、あの女の子の履歴書」
「いや、見つからなかった。けれどもう良いのだよ。
 黒井が彼女を見つけたのだとしても。あるいは全く別の子だったのだとしても。
 私に向かって、自分は我が社のアイドルだと言ってくれた、彼女の言葉を信じることにしたんだ」
「響ちゃんに良く似た子だったんですよね。沖縄出身の、元気で明るい女の子。
 逃がした鳥はやっぱり、立派に見えるものですか?」
「私は欲張りでズル賢くて悪い大人だからね。ルールを破ってばかりなのは昔から変わらぬよ。
 だから黒井に文句を言われてばかりなのだ。小鳥君は、それも、嫌というほど見てきたではないか」


小鳥さんは笑い、社長はカギを差し出します。逃がした鳥の過去を探ることは、恐らくもうありません
虹色の鳥が、あるべき場所にカギをしまって――765プロの明かりが、ひとつ消えました





【考察】 創作発表板アイマススレ2-228・229 投下日:2009/06/19

少し前に、pixivのタグ企画で【fairyt@le】というものがありました。
(リンク先pixiv/既に企画は終了しております)
「おとぎ話+アイマスで好きな絵を描こう!」という企画です。
これが実に楽しい作品揃いで、毎日拝見しているうちに自分でも考えてみたくなり、
今回2作ほど書いてみました。

後発になる「虹色の鳥」が話としては先に出来上がったもので、
こちらはその「虹色の鳥」をベースに、違う時間軸で、別のSSとして考えたものです。
二つのSSに確固としたつながりは存在しませんが、元が同じものなので
(原作=「金の卵をうむニワトリ」+「ジャックと豆の木」)
どこか近い雰囲気を感じられるかもしれません。


もともと好きなジャンルでもあったので、楽しく考えながら書けました。
この場を借りて企画発案者さまにはお礼を申し上げます。ありがとうございました。



***

投下後、「社長が捜していたものは何だったのか?」というご指摘をスレにて頂きました。

追記として、以下に解釈案のひとつを残しておきたいと思います。
もしも他の解釈が浮かばれましたら、教えて頂けると泣いて喜びます。

【More】

・社長が捜していたもの→「ひびき」の履歴書
・社長がやりたかったこと→「確認」と「謝罪」


<補足説明>

961プロが存在する以前、「ひびき」と「たかね」は
「一度は765プロに入るかもしれなかった」(没キャラの)女の子でした。
(高木社長は履歴書で彼女たちを「確認」するところまでは行っていたと考えます)



時が流れ、高木社長の前に「響」と「貴音」が姿を現します。
引き取ったのは黒井社長。昔からのライバルで、「小鳥さん」を挟んでもめた相手です。
(当時はいろいろあったけれど、ルール破りの高木社長が小鳥さんを保護したと解釈)



高木社長は「彼女たちは昔765プロに入るはずだったあの女の子なのか」を考えます。
小鳥さんの時のように、「逃がせるものなら逃がしてやりたい」、とも考えます。

↓ (以下、話を響1人に絞って進めます)

確認するためには「現在の響の履歴書」が必要です。
961プロから出してやり、765プロに迎え入れることで、それは叶います。
「ひびき」と「響」の履歴書が同じならば、社長は「響」に謝ることができます。
黒井社長のもとで、一年間も孤独なアイドル活動をすることになった原因の一端は、
あの時あのタイミングで、765プロに迎え入れなかった自分の責任でもあるからです。
(厳密にいうとそういうわけでもないのですが、この話の社長はそう解釈しています)



社長は履歴書を捜す一方で、「響」が本当にあの「ひびき」だったとして、
「あのとき迎え入れなかった自分」を責められることも考えていました。
黒井社長の事務所は良くないという理由だけで765プロに引き戻したのなら、
「最初から765プロに入れてくれればよかったのに」、と責められても文句は言えません。



社長は「響」が「ひびき」であったら良いと思っていました。
その確認が取れれば、済まなかったと謝ることができるからです。
けれど(ゲーム上)パーフェクトサンの「響」が存在した時点で「ひびき」の存在は無くなり、
社長が昔の「ひびき」に会う可能性は無くなってしまいます。



作中では響が「虹色の鳥」のことを社長に尋ねます。
「助けたアイドルの話」をしながら、「助けたアイドル」と話す高木社長。
小鳥さんとの違いは、響がまだまだ現役であるということです。
1年間も遠回りしたトップアイドルを前に、その理由が自分にあるものかどうか、
もしかしたら時間軸をずらしたのは自分なのではないか、と考えていました。


社長は「過去の選択で、アイドルたちが間違った居場所に1年間も居たかも知れない」ことを気にしており、
自分の意志で「再び765プロに取り戻そうと動いた」ことを少し気にしています。

「正式な765プロのアイドルにしてやれた」までに、あまりにも遠回りしすぎてしまったため、
同一の人物だったら、「765プロのアイドルになれたことすら否定するかもしれない」と考えていました。

(結果的に「響」は「ひびき」ではなく、全くそんな過去が無かった女の子として存在しており、
 社長に対してなにか恨みの部分を負っているわけでもないアイドルだったわけですが)


***


解釈案のひとつは以上になります。
もともとのアイデアは響ではなく美希(961版)の方にありまして、
しばしば美希スレでも見かけた意見なのですが、

“1年間も一人ぼっちでアイドル活動する羽目になるなんて、いくらなんでも美希が可哀想だ”

ごもっともな意見です。なまじ箱からSPへのギャップが最大級だったのが美希だと思います。
このパラレル案を、響で考えた結果が、
「(元々765プロ所属だったかもしれない)元961プロの、現765プロの響」というものです。


***


思っていたより長くなりました。読んでくださってありがとうございます。

「高木社長は響を絡めた何かを気にしている」
「自分の意志で昔誰かを助けたようだが、それを大っぴらに良いことだとは発言できない」
「響は社長に向かって765プロのアイドルだと言った」→「社長がその発言に安堵している」
「小鳥さんは無事のようだ」

このあたりが伝わってくれたらいいなーと思っていましたが、
解釈次第によっては振り幅が大きすぎて最後までスッキリしなかったかもしれません。
次回以降は解釈に悩まれることのないよう、
ポンときて、ズンときたら、ザン、ホイの演出でまとめるよう精進します。


「いやむしろこの解釈の方が!」と尻を蹴とばしてくれる方のご意見に備えて防災頭巾買ってきます。
おつかれさまでしたーノシ
00:00  |  高木社長  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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