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2010'03.19 (Fri)

ここだけの話

coroさん主催「アイマス一時間SS」参加作品
テーマ(選択可):「溶ける」「花束」「対峙」「強襲」

→「花束」「対峙」を使用

***

【More】

「花束を頂きたいんです」と、青年は言いました。

「かしこまりました。どのような花束を、ご用意いたしましょうか?」
「……実はこれから、結婚式に招待されているんです。
 今日の主役の花嫁は、トップアイドルだった女の子なんですよ」

大事な用件を請け負った花屋の店主は、青年に椅子を勧めます。
色とりどりの花を見わたしながら、青年は少し困った表情になりました。

「誰かに贈られる花束なんて、見飽きているかもしれないな」
「あなたから贈られる花束は、見飽きていないかもしれませんよ」
「そうかなあ」
「突然プレゼントされる花束は、いつだって大変嬉しいものです」

贈り主が大切な知り合いでしたら、なおさらのことですよと、店主は続けます。
その発言に背中を押された青年は、ぽつりぽつりと昔の話を始めました。


***


はじめてテレビに出演できた日のこと。
メジャー雑誌の表紙を飾ることになったときの笑顔。

大きなオーディションに落ちて、悔しがりながら携帯を鳴らしてきたこと。
タイミング悪く自分も落ち込んでいたので、逆に励まされてしまったこと。

青年が語る言葉のなかに、嘘や誇張は、ひとつもありませんでした。
毎日が本当に楽しかったんですよと、その目がいちばん多くを語っていました。

「誰かの花嫁になってしまうのは、やっぱり少し寂しいな」
「でも、今日の花嫁さんは、この上なく心強いことでしょうね」
「何故ですか?」
「トップアイドルになる前から、ずっとファンだった方に参列して頂けるのですから」

そう言われた青年は、店に入ってからようやく、穏やかな表情を浮かべました。
店主は、ゆっくりゆっくり時間をかけて、花束を作ります。


***


「ここだけの話なんですが」と、青年は言いました。

「僕が、彼女の、最初のファンだったんですよ」

完成した花束を紙袋に入れていた店主が、感心した様子で青年を称えます。

「それはそれは。世界で二つとない名誉なことですね」
「だから、今日だけは、花婿には一切遠慮してあげないつもりなんです」
「ご武運をお祈りいたします」
「ありがとうございます。誰かに打ち明けたら、気持ちがすっきりしました」

店主に見送られた青年は、頭を下げて、花屋をあとにしました。
来店したときに抱えていた、ささやかな不安は、足元に全て置きざりにして。
青年は、ゆっくりゆっくり時間をかけて、式場に向かいます。


***


式場の前で待ち合わせをしていた女の子が、片手を挙げて、青年を下の名前で呼びました。
待ち合わせの時間に遅れそうだった青年は、花束を掲げて、小走りで式場へと向かいます。


青年は、青年でした。誰が見ても、もう、立派な青年でした。

今日の主役によく似た雰囲気の――眼鏡が似合う男の子でした。

                                 (おしまい)
23:00  |  律子  |  TB(0)  |  CM(9)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

きっと素敵な花束ができたんだろうなーと思いました。
青年の正体にちょっとだけびっくりしました。あ、そっちか、とw
綺麗にまとまってて、すごく上手だなーと思いました。
爽やかで素敵なSSでした!
ピヨ談 | 2010年03月20日(土) 02:42 | URL | コメント編集

読ませていただきました。
アイドルを限定しない話、でもしっかりアイマスの話なんだなぁっと感心しきり。
プロデューサーになって元担当アイドルが結婚したりすると、なんだかこんな思いを抱いてしまいそうだなっとも共感してしまったり。
すっきりとまとまっていながら味わいのあるステキな作品でした^^
ご参加ありがとうございます、おつかれさまでした。
また次回もご参加いただけるとうれしいです^^
coro | 2010年03月20日(土) 21:36 | URL | コメント編集

>ピヨ談さん

ご訪問ありがとうございます。
花束も青年も女の子も花嫁も、ほとんど全てを読み手さんの想像にお任せして
しまいました。(そのため、一部においてイメージ差異が発生したかもしれません)
読み手さんが想像したイメージの幅だけ、色々と解釈していただけたら幸いです。
ピヨ談さんに浮かんだイメージの花束が、素敵だったことを喜ばしく思います。

まだまだ色々と未熟なSS書き手ではありますが、ティン☆ときていただけるような
SSを目指して、今後も頑張りたいと思います。
コメントどうもありがとうございましたー!
寓話 | 2010年03月20日(土) 23:07 | URL | コメント編集

>coroさん

コメントどうもありがとうございます。
一周目はP視点を通して、限定されていないアイドルを想像してもらって、
二周目は涼視点になって、律子の姿を想像してもらえたらいいなと考えていました。

P視点の場合は寂しい展開ですが、涼視点だとまた少しちがったニュアンスに
なるんじゃないかなと思います。「一粒で二度おいしいSS」を考えていましたが、
作品内に、何かしらの味わい成分が出ていてくれたら、とてもとても嬉しいです。

楽しいSS企画をありがとうございました。そして主催おつかれさまでした。
他の方々の作品熱に倒れないよう、次の機会まで修行を積んできます(*´ー`)ノシ
寓話 | 2010年03月20日(土) 23:10 | URL | コメント編集

こんばんは!
感想への返信、ありがとうございます。つたない感想で申し訳ない……。
ところで、もしよければ、ブログのリンクを貼らせていただきたいのですが、いかがでしょうか。
ピヨ談 | 2010年03月21日(日) 01:15 | URL | コメント編集

こんばんはー。リンクのお誘いありがとうございます。大歓迎です!
作品宛の感想コメは全て元気の源です。無償でエリクサー頂いてるようなものです。
身にあまる感想に対しては、正直恐縮してしまうこともしばしばなのですが、
ただ恐縮しているのも勿体ないので、以降の作品でお返ししていけたらと思っております。
うちのブログからもリンクを繋げさせていただきました。
今後ともよろしくお願いいたします。
寓話 | 2010年03月21日(日) 18:35 | URL | コメント編集

リンクの件、ありがとうございます!
今後ともよろしくお願いいたします。
ピヨ談 | 2010年03月21日(日) 19:17 | URL | コメント編集

こちらこそー!ノシ
寓話 | 2010年03月21日(日) 21:06 | URL | コメント編集

>9/13拍手コメントの方

拍手コメントありがとうございます。
古い作品に反応を頂いて、恥ずかし半分くすぐったさ半分な気分です。


>「『だから、今日だけは、花婿には一切遠慮してあげないつもりなんです』」
>とあったので、
>――このP、結婚式で花嫁をさらう気なのか?などと勝手に妄想して、
>ハラハラしていましたが、
>最後の2行を読んで、3秒考え、最初から読み直して、安心しました。

ハラハラして頂けたようで、こちらとしてはニヤリですw
過去コメントの再掲になりますが、一周目と二周目で、
SSの中に違う雰囲気が出ていたら良いな、と思っていました。
一周目はハラハラを、二周目はハラハラとは違う成分を含んで
眺めていただけたら、とてもうれしいです。


>涼と夢子ちゃん(?)の仲むつまじい様子、
>律子さんの美しい姿が想像されて、幸せな気持ちになれました。

仰るとおり、あの女の子は夢子ちゃんをイメージしていました。
青年になった涼と、花嫁さんになった律子、
そして二人の間に居そうな、夢子ちゃんを書きたかったのです。


>素敵なSSをありがとうございました。

素敵なコメントを頂戴して、自分も幸せな気持ちになりました。
こちらこそ読んでくださってありがとうございました!
寓話 | 2010年09月14日(火) 04:06 | URL | コメント編集

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