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2010'04.26 (Mon)

『甘い涙』

(skypeチャットを使用した一行(一段落)リレーSSです)

【概要】

・リレー順序 1:ガルシアさん2:肉塊さん3:トリスケリオンさん4:寓話(ダイスツール順)
・制限時間 60分→90分(22:00開始~23:30終了)
・1レス記入時間は約1分~5分程

(追加ルール)
・今回はシリアス限定
・三行まで改行可

【More】

『甘い涙』

その日、春香は泣いていた。

止めどなく流れる涙を、拭うこと無く春香は立ち尽くしていた。
そんな春香の後ろで、千早はどう声をかけていいか迷っている。
オーディションの合否と共に、二人の運命も真っ二つに分かれてしまった。
「ごめんね。一緒に合格するって約束してたのにね。私、ダメだね」
春香の謝罪に、千早は一層春香にかける言葉に窮した。
安易な慰めの言葉をかけられる程、千早は器用ではない。
「千早、ちょっと良いか」
プロデューサーが声を掛ける。呼ばれたのは合格者の千早だけだった。
春香は黙ってその背を見つめている。

――やっぱり、私はアイドルになんて……
春香はそっとリボンをほどき、それを丸めて両目を押さえた。

リボンは瞬く間に春香の涙でその色を変えた。
この様に、リボンに涙を染み込ませるのは、これで何度目だろうか。

涙で重くなるリボンに比例するかの様に、春香の心も重く湿り、浮上しようとする気力は一切沸かない。
手が震え、力が入らなくなり……意識が少しずつ遠くなっていく。

(最初は同じ、Fランクデビューだったのに……)
今日のオーディションで、千早はとうとう手の届かぬ場所へ行ってしまった。
同じ日にお揃いのティアラを貰ったあの日が、まるで幻のようだ。

あのティアラ、もう一度付けてみようかな。
春香は、何かを取り戻せるかもしれない、と思った。
次のオーディションは、2週間後の『IDOL VISION』だ。

「あれ?…壊れてる…」
明らかに人為的な傷が、そのティアラにあった。
大事に、大事にしまっておいたはずなのに。

「あら春香。それ、どうしちゃったの?」
伊織は春香の手からティアラを取ると、その破断面を凝視する。
「階段から落としたの? 相当な衝撃がかかった感じね。この割れ方は」

「そんなこと、ある訳無い…?ねえ、伊織?」
伊織の言葉に、春香はある疑問が湧いてくる。

「このティアラ、鍵かけてしまってあったんだけど……」
そう、このティアラはきちんと保管するために鍵のかかるロッカーにいれてあったのだ。

「そんな……じゃあ、どうしてここに?」
心底わからないと言った表情の伊織が、春香の背後に視線をやる。
「あら、千早。今日は合格おめでとう」

「おめでとう、ですって? 何がおめでたいというの?」
その声はひどく冷たく、そして、何かに苛立っていた。
まるで千早ではない、別の誰かを見ているようだった。

「そんな、この世の終わりみたいな顔、よくもまあ春香の前で出来たものね?」
千早の苛立ちに気付きながら、敢えて伊織は悪態をついた。

「アンタだって、春香だってこの世界に入った時から覚悟なんてとっくの昔に出来てたと思うけど?」
伊織は、壊れたティアラを半ば強引に春香の手から奪って、くるくると指で回す。

「も……もう良いよ、伊織、やめてよ!」
先に続く言葉に、何か言いようのない不安を覚えた春香が、慌てて伊織を制する。
千早は、そんな春香を、どこまでも冷静に眺めていた。

千早は首に掛けていたシルバーのペンダントを外す。
「いい加減、そんなものに頼るのはやめなさい」
そう言って、そのペンダントを伊織の指で回るティアラに投げ当てた。

その衝撃で、遂にティアラは真っ二つになってしまう。
「どうして…。思い出のティアラなんだよ?なんで大事にしちゃいけないの?
 千早ちゃんも、伊織も、おかしいよ!」

千早は、その言葉に言葉では応えず……力強く春香を抱きしめた。
ただ、ただ、不器用に。

「だから、あなたは落ちてしまったのよ」
リボンの無い春香の頭に、ぽつり、ぽつりと千早の涙が落ちてくる。
「ここから上にはい上がるためには、今までの思い出にすがっていてはいけないの」

――なぜ? 千早ちゃんにとって、私達との思い出って無意味なの?
春香には理解が出来なかった。
何かを手に入れる為には何かを捨てなければいけないなんて、嫌だ!!

「思い出を捨てるなんて、出来ないよ。
 だって…今この瞬間だって、大切な大切な、千早ちゃんとの思い出だもん。
 どんなに捨てようとしたって、思い出はどんどん生まれてる。私はそれを全部、大切にしたい!」

「捨てる?私は捨てろなんて一言もいってないわよ」
 落ち着かせるように、ぽんぽんと春香の背中を千早は優しく叩く。

「……え?」
ぐしゃぐしゃになった顔を上げれば、ぐしゃぐしゃになった顔の千早がいた。
ああ。こんなふうに揃って泣いたのは、いつの事だったろう。なんだかもう遠い昔のことみたいだ。

「あなたの大切なティアラは、今もあなたのロッカーの中よ」
千早はそう言って春香から離れ、床に落ちたティアラを拾う。
「これはあなたとお揃いの、私のティアラ――」

「そんな…千早ちゃん、どうして?」
当然の疑問を、春香はぶつける。
「…壊したかったの…。昔の、自分を…」

春香を抱きしめる腕に、さらに力が入る。
そして、そんな二人を見て伊織が口を開いた。

「まったく、あんたたちってホント不器用よね。昔から」
伊織の言葉はとても小さな声で、だから、2人には届かなかった。
伊織は一度小さなため息をつき、そっと控え室のドアを閉めた。

「まったく、アンタたちの泣き顔なんて、甘ったるくて見てらんないわよ」
伊織はゆっくりとその場から遠ざかった。この結末がどうなるか、わかりきっているのだから。..
『甘い涙』 (完)




【まとめ】
・中盤のカオス展開を見事に収束させるガルシアさん
・アイテム破壊からタイトル処理までこなす肉塊さん
・キラー…無難なパス回しに徹するトリスケリオンさん
・最後の一行に8分も悩む寓話

(前回のリレーはこちら
20:30  |  リレーSS  |  TB(0)  |  CM(6)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

おお、すげぇ!

途中いろいろと迷走しそうなキーワードを無難にこなしつつ
しっかり初動テーマに流れを繋ぐ辺り、美しいですね。

思い出と写真の違うところは、時間経過でより色合いが
鮮烈になるのが思い出で、退色していくのが写真だから
僕らは色褪せた写真の上に思い出で着彩していくんだ、
と言う昔自分が書いた駄文の一節を思い出すなどw

……ええ、参加しなくて良かったです(汗
誘われてはいたんですが、シリアスと言うところで躊躇
しておいて大正解だったと、胸をなでおろしておりますw
微熱体温 | 2010年04月27日(火) 00:06 | URL | コメント編集

まぁ、なんというか。

振り返ると、いつもいい思い出なんですよね。
やってる時は必死ですけど!

コメディかシリアスかは瑣末な問題で、
この形式で、複数人でやる、ってのが面白いですね。
自分の「つもり」と、他人の「きっと」のすれ違いが、
リアルタイムに把握できるのはとても勉強になります。

またぜひ、やりましょう。
ガルシアP | 2010年04月27日(火) 00:40 | URL | コメント編集

>微熱体温さん

ありがとうございます。リレーSSは何ができるか最後まで解らないので、
どなたかに「これは有り!」と仰って頂けると、とてもホッとします。
あんなに迷走した流れも、終わってみれば嘘のようですw

思い出と写真は一見近い存在同士ですが……確かに「色」の違いが有りますね!
たとえ掠れても上塗りすることができる関係、というのに激しく納得です。
リレー終盤、(これは思い出ボム連発の流れかもしれない…)と思ったのですが
頂戴した一節の「思い出」解釈には「なるほどー!」と唸ってしまいました。

「シリアス難しいなー!」とスキル不足を痛感した回でした。毎度勉強になります。
機会がありましたら是非、次回はゆるーいギャグも有りな席でご一緒しましょう。
寓話 | 2010年04月27日(火) 19:24 | URL | コメント編集

>ガルシアPさん

いつも終了時には自然と、BGMに『まっすぐ』が流れてくる気がします。
プレーの最中はボールが滅茶苦茶に飛んでいくのに、
終了時刻が近付くと、皆でゴールに「うおおおおー」と持っていく流れが
なんだか良くわからないけど熱い……!

「次回はこうやって書いてみよう」とか「短く書いてまわそう」とか
リレー作業そのものが、SS技術の研鑚に繋がっているのを感じます。
同じプレイヤー同士でも、ポジションが違うとパス回しが違うのも
面白いですよね。
いろんな書き手さんのSSの癖を拝見できる貴重な機会です。

こちらこそ毎度勉強になります。是非またプレーしましょう。
寓話 | 2010年04月27日(火) 19:42 | URL | コメント編集

いおりんの状況収拾スキルマジ最高w

最後の二周は神がかってますね。シリアスしばりの効果もあるのでしょうが、打ち合わせもなしでゴールを目指せるチームワークに乾杯です。
レシ | 2010年04月27日(火) 19:55 | URL | コメント編集

>レシさん

伊織は万能選手ですね。変な流れでもサラッと乗れちゃうんですw
やっている最中は、流れについていくのに必死で余裕ゼロなんですが、
twitter側で書き手以外の方のつぶやきからヒントを貰えるのが大きいですね。
自分ひとりでは絶対作れない文章が出きあがるのが面白いです。

レシPのタイムラインが混沌としていないかなあ…心配だなあ……
寓話 | 2010年04月27日(火) 20:28 | URL | コメント編集

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